こんにちは!“言葉力”編集長のケンです。
先日、ボクシングの試合を観ていたら、挑戦者が思い切って相手の懐に飛び込んでパンチを打ちまくっていました。
すると、解説者が「肉を切らせて骨を断つ作戦ですね~ チャンピオンもペースが乱れていますよ。」と熱く語っていたんですね。
その時、「肉を切らせて骨を断つ」という言葉が気になってしまいました。
何て、痛々しい言葉なんだろうかと・・・
ということで、今回は、「肉を切らせて骨を断つ」の意味、由来、例文、類語、そしてビジネスでのケースについて解説をしていきます。
目次
「肉を切らせて骨を断つ」の意味
「肉を切らせて骨を断つ」は、自分も相当にダメージを受けるけれども、それ以上に相手を痛めつけるという意味です。
肉が切られるのは確かに痛いですよね。
でも、肉を切られるか、骨を折られるか、どっちがまだマシかと聞かれたら、基本的には、皆さん、肉を切られる方がマシだと答えるでしょう。
もちろん、どっちも嫌だという意見もごもっともですが・・・
「肉を切らせて骨を断つ」の由来は剣道
「肉を切らせて骨を断つ」は、元々、剣道の極意として知られています。
特に自分より強い相手を倒すためには、こういった捨て身の作戦が必要となってくる訳です。
また、これは剣術の話になりますが、薩摩示現流(さつまじげんりゅう)という薩摩藩を中心に伝わった古流剣術では、肉を切らせて骨を断つを実践している剛剣術として知られています。
初太刀(しょだち)といって、最初に切りつける一振りにすべてを賭ける潔さが、恐れられているんですね。
孫子や水滸伝にも!?
また、孫子の兵法36計の34計の中に、苦肉計(くにくけい)という戦術があります。
これは「人は自分を傷つけることはない」という心理を利用して敵を騙す作戦です。
文字通り、「肉を切らせて骨を断つ」という意味ではありませんが、考え方としては、非常に近いと言えるでしょう。
ちなみに、水滸伝にも「肉を切らせて骨を断つ」という作戦があるという人もいますが、こちらは、直接的な記述はありません。
ですから、「肉を切らせて骨を断つ」は、やはり剣道の精神が由来だということが出来ます。
「肉を切らせて骨を断つ」の例文・使い方
次郎
太郎
という感じで「肉を切らせて骨を断つ」は使われたりしますが、他にもこういった使い方があります。
- ジョーは、肉を切らせて骨を断つ戦い方として、ノーガードからのクロスカウンターパンチを学んだ。
- ここで、飛車を捨てるとは、やはり、肉を切らせて骨を断つ作戦なんだろうか。
- 大統領は、輸入品の関税を上ると自国の経済も打撃を受けることは分かっていたが、肉を切らせて骨を断つ覚悟で、その政策を実行した。
「肉を切らせて骨を断つ」の類語
「肉を切らせて骨を断つ」には次のような類語があります。
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」とは、一身を犠牲にする覚悟があってこそ、活路を見出すことが出来るという意味です。
溺れかけた時は、思い切って水に体を委ねると体が浮き上がる時もあるよというたとえから来ています。
「死中に活を求める」
「死中に活を求める」や「死中に活あり」とは、ほとんど助からないような状態の中でも、なおも生き延びる道を探し求めるという意味です。
この場合は、自ら助からない状態に身を置くという訳ではありませんが、ギリギリのところから活路を見出すという点で、似た表現となります。
「肉を切らせて骨を断つ」はビジネスの世界でも
「肉を切らせて骨を断つ」は、ビジネスの世界でも、用いられる手法です。
ソフトバンク・孫社長の奇策
ソフトバンクが通信業界に参入した時、孫社長は、ある奇策を売って出ました。
それは、ADSLというモデムを無料で配りまくったのです。
これは、一時的には大赤字に見えるかもしれませんが、その後、通信料をしっかり取ることによって、大成功を収めることが出来ました。
まさに、「肉を切らせて骨を断つ」手法ですね。
プリンタが安い理由
プリンタの本体価格は、かなり安くなっているケースは多いです。
しかし、もちろんこれも、ちゃんと計算された作戦です。
プリンタを使い続ければ、顧客は、継続的にインクカートリッジを使い続けることになるので、そこで利益をしっかり取っています。
初月無料キャンペーン
ビジネスの手法として、よく用いられるのが、「初月無料キャンペーン」です。
「えっ、本当にタダなの?お得!」と思って、購入する方も多いかと思いますが、結局、そのまま2ヶ月目以降も使って、たくさんお金を使う人って多いです。
まさに、「肉を切らせて骨を断つ」作戦にしっかりハマるパターンですね。
まとめ
「肉を切らせて骨を断つ」は元々は、剣道が由来のことわざですが、このような考え方自体は、孫子の兵法にも見られるなど、昔から有効な作戦として使われて来た歴史はありました。
現代社会でも、スポーツやビジネスの世界でも、よく使われることが多い言葉です。
もちろん、痛みを伴うリスクは高いので、かなりの勇気は必要ですが・・・
それでも有効な作戦の一つであることは間違いないので、いざという時は、使ってみて下さい。