先日、以前、ある政治家が「君は、長幼の序をわきまえないとダメだ」と話していたことがニュースで話題になった時がありました。
「長幼の序」は、普段、あまり聞き慣れない言葉ですが、礼儀に厳しい人が使うのを時々聞くことがありますよね。
そこで、今回は「長幼の序」の意味、由来、使い方、そして英語での表現について解説をしていきます。
「長幼の序」の意味
「長幼の序」とは、年長者と年少者の間にある秩序を意味します。
「長」は年長者、「幼」は年少者、そして「序」は順番や秩序を表します。
「長幼の序」は、具体的には、
- 年長者は年少者を慈しまないといけない
- 年少者は年長者を敬い、従わなければならない
という考え方です。
ただ、一般的に、年長の序は、年少者がやるべきことを説く際に使われることが多いです。
例えば、
- 食事をする際、年少者は年長者より先に食べ物に手を付けてはならない。
- 兄弟姉妹の関係である場合、年少者は年長者より、先に結婚しない。
- 年少者は年長者の前ではタバコを吸わない。
- 年少者は年長者の言うことを絶対に聞かないといけない。
ということを聞いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ですから、「長幼の序」と聞くと、年少者は少し緊張してしまうところがあるかもしれないですよね。
「長幼の序」の由来
「長幼の序」は、孟子によって提唱された五倫(ごりん)と呼ばれる儒教における5つの道徳法則の一つです。
孟子は、滕文公上にて、五倫について、以下のように語っています。
父子の間には親愛があり、君臣の間には礼儀があり、夫婦の間には区別があり、長幼の間には順序があり、朋友の間には信義がある/父子親(しん)有り、君臣義あり、夫婦別有り、長幼叙(じょ)(序)有り、朋友信有らしむ
儒教においては、
- 父子の親
- 君臣の義
- 夫婦の別
- 長幼の序
- 朋友の信
という5種類の人間関係を円滑に維持することを目的として教えです。
また、儒教では、仁、義、礼、智、信の「五常」を人間の尊ぶべき5つの徳性とし、「五倫五常」と合わせて呼ばれる時もあります。
「長幼の序」の例文・使い方
次郎
太郎
という感じで「長幼の序」は使われたりしますが、他にもこういった使い方があります。
- あの国は、日本と違って、長幼の序がなく、実力主義が主流である。
- 会社において、長幼の序という考え方は尊いものであるが、年配の人が実力がないのに関わらず管理職に居座ると、やはり弊害をもたらしてしまう。
- 部活では、長幼の序の考え方があるため、後輩は先輩に対して絶対服従しなければならなかった。
- 長幼の序というのは分かるが、年が一歳上であるという理由だけで、ここまで横柄な態度を取るのはいかがなものか?
- 韓国では、儒教的な長幼の序の考え方が、かなり厳格であるが、最近、その傾向も変わりつつある。
- 現代社会においては、長幼の序という精神が失われているため、様々な混乱が起こっているのではないだろうか。
「長幼の序」を英語で表現すると?
長幼の序は、日本、韓国、中国など東洋の国では、一般的な考え方は、西洋など英語圏の社会では、あまり浸透していないイメージがありますよね。
ただ、英語でも、“respect your elders”という「年長者を敬う」という表現はあります。
ですから、英語圏でも「長幼の序」の概念がないかというと、決してそういうことでもないのです。
韓国での「長幼の序」
これは、私が韓国在住の方から聞いたことですが、韓国では、日本よりもさらに長幼の序を重んじる社会であるとのことです。
例えば、
- 地下鉄の優先席に若者は絶対に座らない
- 年長者と年少者が食事をした際、割り勘をすることは、ほとんどなく、基本的に年長者が年少者の分までお金を払う
- 年少者が年長者の前で、お酒を飲む時は、正面ではなく横を向いて飲む
という感じで、かなり徹底しているところがあるんですね。
まとめ
「長幼の序」は、昔に比べると、重要にされない傾向が強くなっていることは事実だと思います。
会社でも、年功序列(年齢や勤続年数に応じて役職や賃金を上昇させるシステム)ではなく、実力主義で評価するところが増えて来ました。
ただ、その一方で、長幼の序が崩れると、社会のバランスが失われやすくなるという考え方もあります。
個人的には、「長幼の序」では、年少者の責任がより強調されることが多いけれども、その一方で、年長者は、傲慢になったり、高圧的な態度になったりして、本来、やるべきことを行わないと、年少者からの不満が高まってしまうのだと感じています。
やはり、「長幼の序」は年長者と年少者の双方が、果たすべき責任を果たし、努力することによって、本来あるべき秩序が守られ、より発展的な人間関係が形成されていくと思うんですよね。