「的を射る」と「的を得る」の違いは?意味や例文を徹底解説

先日、ある芸能記事で「彼は、的を射るトーク力に定評がある」という表現をしていたんですね。

その時、「的を射る」と聞いて、似たような言葉で「的を得る」があるけれどもどういった違いがあるのかと気になりまして・・・

そこで、ここでは「的を射る」と「的を得る」の違い、意味、例文、そして類語について解説をしていきます。

「的を射る」・「的を得る」の意味

「的を射る」と「的を得る」は、どちらも意味は、「うまく要点をつかむ」です。

発言をする時だけでなく、行動をする時も、周りの状況を理解した上で、的確な言動をしている人に対して、この表現を使います。

また、実際に使う場合は「的を射た発言」、「的を得た行動」というように、連体形で使うことが多いです。

「的を射る」と「的を得る」の違いは?

同じような意味の慣用句が2つあるということは、どちらが正しくて、どちらかが間違っている可能性が高いということになりますね。

この点に関して、平成24年度「国語に関する世論調査」では、「的を射る」が本来の言い方であると明記しています。

その上で、物事の肝腎(かんじん)な点を確実に捉えることを何と言うかという質問に対する回答結果を発表していますが、

  • 「的を射る」(本来の言い方)と答えた人:52.4%
  • 「的を得る」(本来の言い方ではない)と答えた人:40.8%

という結果が出ました。

何とか、「的を射る」と答えた人の割合が上回っていますが、その差は、僅かです。

つまり、「的を得る」という表現は、本来の言い方でないにも関わらず、かなりの割合で浸透しているということなんですね。

「的を得る」は誤用だとは限らない

ここで、注目すべきなのは、「国語に関する世論調査」では、「的を得る」は本来の言い方ではないと言っていますが、誤用だと明記はしていないという点です。

実際、「的を得る」が本当に誤用であるかどうかという点については、論争が湧き上がったくらいです。

三省堂の見解の変化

三省堂では元々、「的を得る」は「当を得る」と混同した誤りだとしていました。

しかし、第7版の改定にあたり再検証を実施した上で、「的を得る」は「的を射る」の誤りだという従来の記述を撤回ました

この点については、「三省堂国語辞典」の編集長である飯塚浩明氏は、ツイートで以下のような発信をしています。

元々は、弓矢などが、的(まと)に命中することが語源となって、「的を射る」という言葉が生まれました。

ですから「的を得る」は、語源から考えると違うのでは、という話になった訳ですね。

しかし、よくよく考えてみれば、「的を得る」も「的をうまくとらえている」という意味だから、決して間違っていないぞということになったのです。

「的を射る」・「的を得る」の例文・使い方

今日の会議は、途中まで、なかなかまとまらなかったけど、五郎君が的を射た発言をしてくれたから、最後は良い結論が出せたと思うよ。

次郎

太郎

五郎君は、決して多くを語るタイプではないけれども、あそこで、ああいった発言が出来るということは、やっぱりすごく頭が良いんだろうね。

という感じで「的を射る」は使われたりしますが、「的を射る」を「的を得る」に言い換えても大丈夫です。

また、他にもこういった使い方があります。

  • ビジネスで悩んでいた時、コンサルタントから的を射たアドバイスをしてもらい、良い解決策を見つけることが出来た。
  • 社会が混乱している時は、政府として、的を射た対応をすることが非常に大切となる。
  • 面接官から質問をされた時、的を射た答えを返せるよう事前にしっかり準備をしておこう。
  • お客様からのクレームに対応することは大変だが、的を射たご意見も多いので、学ぶ点も多い。
  • 監督から的を射たアドバイスをもらって、その選手は劇的に成績が向上した。

「的を射る」・「的を得る」の類語

「的を射る」や「的を得る」には以下のような類語があります。

正鵠を射る(せいこくをいる)

正鵠には、的の中心という意味があります。

ですから、「正鵠を射る」は、「物事の急所・要点を正しくおさえる」という意味になります。

ただ、こちらの表現は、日常生活ではあまり使われません。

核心を突く

「核心を突く」は、物事の最も重要な部分をピンポイントに攻めるという意味の表現です。

「的を射る」や「的を得る」と同じような意味で使われる時もありますが、どちらかと言えば、相手が気にする点や欠点を的確に捉える時によく使われる表現です。

「的を射る」と「的を得る」の論争の行方は?

元々は、「的を射る」が正しく、「的を得る」が誤用であるというところからスタートしました。

しかし、その後、「的を得る」を使う人が増える中で、三省堂は、「的を得る」も間違いではないと訂正するまでに到りました。

ただ、それでも、やはり「的を射る」が正しいと信じている人が多いのも事実で、論争は続いているような感じがします。

個人的には、将来的には、「的を得る」がどんどん定着していくのだろうと思っています。

ただ、現時点では、どちらが正しいかとテストで聞かれたりしたら、「的を射る」が正しいと答えておくのが無難なんでしょうね。