こんにちは!“言葉力”編集長のケンです。
先日、あるドラマで犯人を追う刑事が「このまま逃げようたって、そうは問屋が卸さないぜ!」と言うシーンがあったんですね。
その時、「そうは問屋が卸さない」という言葉に何とも言えない懐かしさを覚えました。
でも、このことわざって実は死語なんですかねえ。
ということで、今回は、「そうは問屋が卸さない」の意味、語源、例文、そして類語について解説をしていきます。
「そうは問屋が卸さない」の意味
「そうは問屋が卸さない」は、そうやすやすと物事は思う通りに進むものではないという意味です。
事前の予想では簡単に、あるいは確実に出来そうだと思っていたことが、意外にうまく出来ないという時によく使います。
「許さない」は間違い
「そうは問屋が卸さない」ということわざを「そうは問屋が許さない」だと思っている人もいますが、「許さない」は間違いです。
では、どれくらいの人達が「許さない」だと思っているかというと、平成18年度の「国語に関する世論調査」で、「そんなに思いどおりになるものではないこと」を何というかとう質問に対して、以下のような回答がありました。
- (a)そうは問屋が許さない:23.5%
- (b)そうは問屋が卸さない:67.7%
- (a)と(b)の両方とも使う:1.9%
- (a)と(b)のどちらも使わない:4.4%
- 分からない:2.6%
つまり、5人に1人は「許さない」だと思っていたことになります。
問屋の仕事は、人を裁くことではなく、商品を卸すことなので、そんな観点から「卸さない」が正しいと覚えておけば良いかもしれませんね。
「そうは問屋が卸さない」の語源・由来
問屋とは、江戸時代の卸売り業者です。
生産者から仕入れたものを大量に仕入れて、小売業者に販売し、仲介手数料を得て収益を得るのが問屋の業務内容です。
そして、小売業者が、問屋から物を仕入れる際、問題になってくるのがやはり価格です。
「これぐらいの値段だったら卸してくれるだろう」と小売業者は期待しますが「そんな安い値段では卸さないよ」というやり取りがあったのは日常茶飯事。
そういったやり取りが由来となって、物事はやすやすと思い通りに運ぶものではないということわざが生まれたのです。
「そうは問屋が卸さない」の例文
次郎
太郎
という感じで「そうは問屋が卸さない」は使われたりしますが、他にもこういった使い方があります。
- 彼は優秀なサラリーマンだったので、起業しても成功できると確信していたが、そうは問屋が卸さず、3年で倒産してしまった。
- 彼ほどの実力があれば、プロでも絶対通用すると思いがちだか、そうは問屋が卸さないのが、現実の厳しさである。
- 彼女は、このダイエット法なら確実に出来ると思ったが、そうは問屋が卸さなかった。
- 彼ほどのイケメンであれば婚活には苦労しないと思っていたが、そうは問屋が卸さないようで、なかなか良い人に巡り会うことは出来なかった。
「そうは問屋が卸さない」の類語
「そうは問屋が卸さない」には以下のような類語があります。
- 好事魔多し(こうじまおおし):良いことにはとにかく邪魔が入りやすいという意味
- 花発いて風雨多し(はなひらいてふううおおし):花の咲く時期には雨や風が多いように、良い物事には邪魔が入りやすいという意味
- 月に叢雲花に風(つきにむらもはなにかぜ):良いことは何かと邪魔が入りやすく長続きしないという意味
- 石が流れて木の葉が沈む(いしがながれてこのはがしずむ):世の中には通常の道理とは逆のような理不尽なことがあるという意味
うまくいきそうで、思わぬハプニングに見舞われることや、理解できない出来ない展開になることって本当に多いものですよね(涙)
「そうは問屋が卸さない」って死語?
「そうは問屋が卸さない」と聞くと、「それって死語なんじゃない?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
確かに、問屋という言葉自体が江戸時代の概念なので、ちょっと古臭いイメージがあるかもしれません。
ただ、このことわざは、現代のニュース記事などで数多く使われているので、今でもまったく問題なく使えることわざです。
そうそう、そういえばこの間、アニメのアラジンの吹き替え版を見ていたら、アラジンが「そうは問屋が卸さないぞ!」って言ってましたよ。
「アラジンが問屋なんて言うか」と思わず、突っ込んでしまいましたが(笑)