以前、小学生の先生をしている友人と話した時、次のような話を聞いて、頭が少しこんがらがったことがあります。
「たまに中学の先生から、『何で小学校の図画工作では、制作じゃなくて製作という言葉を使わないんですか?」と質問されることがあるんだよね。
まあ、中学校の美術だと”制作”というから、ややこしいんだけど・・・」
そこで、ここでは制作と製作の違いを事例も紹介しながら、解説していきます。
制作と製作の違い
制作と製作の違いは、2つの観点から説明をすることが出来ます。
作る対象物による違い
まず、何を作るか、その対象物によって制作と製作には以下のような違いがあります。
作る対象物 | 例 | |
---|---|---|
制作 | 芸術作品・創作物 | 映画、放送番組、ラジオ番組、デザイン |
製作 | 実用品 | 工業製品、精密期間 |
辞書などを調べてみると
- 制作:芸術作品、映画、放送番組などを作ること
- 製作:原材料を加工して製品にすること、道具や機械を使って品物を作ること
となっていますが、何をどういった目的で作るかによって、制作と製作は使い分けられるのです。
作る立場よる違い
もう一つの観点として、作る立場の違いというものがあります。
例えば、アニメ映画でゲド戦記という作品がありましたが、スタジオジブリでは、アニメ作品における制作と製作の違いについて以下のように説明しています。
作る会社 | 作る立場 | |
---|---|---|
制作 | スタジオジブリ | 作品を作る実作業を行う |
製作 | 「ゲド戦記」製作委員会 | 作品の企画、資金調達、出資、宣伝、制作、興行全般を全般的に行う |
ここで、「ゲド戦記」製作委員会では、アニメ作品の興行を成功させるため、全般的な製作を行うことになります。
そして、スタジオジブリの制作作業もこの中に含まれることになります。
ケース毎の制作と製作の違いを解説
では、具体的に制作と製作がどのように使い分けられるか、ケース毎に解説をしていきます。
ハンドメイドは制作?製作?
ハンドメイドの場合、モノをどのように作るかによって、制作になるか、製作になるかが違ってきます。
つまり、具体的には以下のように使い分けます。
- すべてオリジナルで芸術作品として作る場合⇒制作
- マニュアルがあり、それに従って作る場合⇒製作
保育園では制作?製作?
保育園で子供たちが工作など作品を作る場合も、制作と製作のどちらを使うか議論が分かれるところもあります。
確かに、芸術作品を作るという観点では、制作になるのかもしれません。
ただ、保育園の場合は園児が、先生が作るお手本通りに作るので、一般的には製作という言葉を使う方が多いようです。
また、厚生労働省が発表している保育所保育指針解説書でも”製作”という言葉が使われています。
チラシは制作?製作?
チラシの場合、受注をしてデザインを作る場合は、制作となります。
ただ、最終的に印刷物として納品をする場合は、製作ということになります。
使い分けは簡単そうで難しい
このように見ていると、制作と製作は、それぞれ定義があるので、使い分けは一見簡単そうに見えます。
ただ、いろいろな事例を見てみると、境界線が曖昧で使い分けが難しい時もありますし、混同して使っている人が多いことも事実です。
実際、細かい使い分けについては、状況に変化によって変わってくるケースもあるかもしれません。
ですから、そういった動向をチェックしてみるのも面白いのではないかと思います。