先日、ニュースを見ていたら「『可愛い子には旅をさせよ』というけれども、最近は、旅をする若者が減っている」という記事を見かけました。
ただ、この時、「可愛い子には旅をさせよ」の「旅」を誤解していないかと、少し、気になりまして。
そこで、今回は「可愛い子には旅をさせよ」の意味、由来、例文、類語、対義語、そして誤用しているパターンについて解説をしていきます。
目次
「可愛い子には旅をさせよ」の意味
「可愛い子には旅をさせよ」とは、自分の子供が可愛いのであれば、手元にずっと置いておくのではなく、世の中に出して、社会の厳しさや辛さを経験させるのが良いという意味です。
親としては、自分の子供が可愛いと、ついつい甘やかしてしまったり、過保護にしたりしてしまいがちです。
しかし、そうすることは子供の成長にとっては良くないどころか悪影響を与えてしまう時もあるので、逆に、苦労をさせた方が良いという意味で使います。
「可愛い子には旅をさせよ」への誤解と本当の意味
「可愛い子には旅をさせよ」ということわざを使っている人の中には、以下のように誤用をしている人を時々見かけます。
させるのは旅自体ではない
「旅」と聞くと「そうか、子供にはやっぱり旅に行かせて、見聞を広めさせるべきだ。」と考える人がいます。
しかし、ここでの旅は、“苦労”を意味します。
確かに一人旅などをすると、見慣れない土地でいろいろ苦労をするかもしれませんが、このことわざでの“旅”は、ただ楽しむだけでの旅とは本質的に意味が違うのです。
客観的に可愛い子供ではない
「可愛い子」と聞くと、「じゃあ、子供がブサイクだったら旅に行かせなく良いのか。」と誤解してしまう人もいます。
ただ、ここでの「可愛い子」は、「愛おしく思っている自分の子供」を意味します。
つまり、客観的にに可愛い、可愛くないは関係なく、自分の子供を愛おしく思っているのであれば、旅(社会的な苦労)をさせた方が良いということなのです。
「可愛い子には旅をさせよ」の由来
今でこそ、旅は、電車や飛行機などを使って目的地まで簡単に行って、快適な時間を過ごすことが出来ますが、昔の旅は違いました。
歩いて移動することも多かったですし、道も十分に整備されていませんでした。
宿も今のように快適な環境ではなかったでしょう。
このように旅は、元々、多くの苦労を伴うものであったのです。
そのような辛い旅をたとえながら、「可愛い子には旅をさせよ」ということわざが生まれた訳ですね。
「可愛い子には旅をさせよ」の例文・使い方
次郎
太郎
という感じで「可愛い子には旅をさせよ」は使われたりしますが、他にもこういった使い方があります。
- 「可愛い子には旅をさせよ」と言うと、必ず、「何かあったら、どうするのか」と心配する親がいる。
- 社会に出た子供が苦労をすると無条件に助けたくなるが、「可愛い子には旅をさせよ」とも言うので、敢えて何もしない方が良いと思う。
- 「可愛い子には旅をさせよ」とも言うので、子供が大学を卒業した後、一人で生活をさせることにした。
- 「可愛い子には旅をさせよ」とはよく言ったもので、海外に留学した子供は、みるみるたくましくなっていった。
「可愛い子には旅をさせよ」の類語
「可愛い子には旅をさせよ」には以下のような類語があります。
若い頃の苦労は買ってでもせよ
「若い頃の苦労は買ってでもせよ」とは、若い時の苦労は、貴重な経験となって将来きっと役立つものだから、自ら進んで苦労をしておいた方が良いという意味です。
これは、親が子供に苦労をさせるというよりは、子供が自らの意志で苦労の道を選択した方が良いという観点になりますね。
獅子は我が子を千尋の谷に落とす
「獅子は我が子を千尋の谷に落とす」は「ししはわがこをせんじんのたににおとす」と読みます。
獅子は、生まれたばかりの子供を深い谷に落として、そこから這い上がって来た生命力の強い子供だけを育てると言われていました。
(実は、ここでの獅子はライオンではなく、中国の古い逸話に登場する想像上の霊獣だと言われています)
そういうたとえから、本当に深い愛情を持つのであれば、子供に対して、敢えて試練を与えて成長させることを意味します。
子供を苦労させるという点では、「可愛い子には旅をさせよ」と同じような意味を持ちますが、こちらの方は、谷に突き落とす訳ですから、もっと強い表現になりますよね。
「可愛い子には旅をさせよ」の対義語はある?
「可愛い子には旅をさせよ」には、これといった対義語がありません。
意味としては、「可愛い子には甘くしろ」という感じになるのでしょうが、残念ながら、そういったことを推奨することわざはないのです。
中には、面白半分に、「ブスには優しくしろ」とか言っている人もいます。
しかし、これは「可愛い子には旅をさせよ」の「可愛い子」を誤解した上で、反対の意味にしているので、正しくはありません。