先日、テレビのドラマで、絶対絶命のピンチに陥った主人公が「万事休す!もはやこれまでか。」と叫んでいたんですね。
その時、「あれっ、万事休す?万事窮す?」と頭が少し混乱してしまいました。
そこで今回は、万事休すの意味、使い方(例文)、熟語、そして逆の意味の言葉などについて解説をしていきます。
目次
「万事休す」の意味
「万事休す」とは、すべての策が尽きて、もう何をやってもダメだ、もうおしまいだ、という意味です。
このことわざは、出典は中国の「宋史(そうし)」という史書の「荊南(けいなん)高氏世家」というお話から来ています。
荊南(けいなん)という国の跡継ぎとして生まれた王子の保勛は、王様から溺愛されて育ちました。
その結果、人から怒られても、にこっと笑う保勛を見て、人々は「万事休す」だと嘆いたのです。
そして、保勛が実際に王になると政治が乱れ、国が滅びてしまいました。
そんなエピソードから、万事休すという言葉は生まれたのです。
「万事休す」は誤用されることが多い訳
「万事休す」は、しばしば、「万事窮す」と誤用されやすい言葉です。
実際、”きゅうす”と聞くと、窮するの窮すだと勘違いして、「すべてのことが窮する、困る」という意味だと勘違いする人は多いようです。
(もちろん、万事急須でもありません)
逆に「休す」という言葉を聞いても、しっくり来ない方が多いかと思います。
ただ、ここでの「休す」は休むことではなく、終わるという意味です。
今まで、「万事窮す」だと思い込んでいる人は、それは間違いなので、これからは「万事休す」を使うようにして下さいね。
「万事休す」の使い方・例文
次郎
太郎
- 旅行先で財布を落としてしまい、さらにスマホの電池も切れてしまった。まさに万事休すの状態だ。
- 夏休みは明日終わるのに、夏休みの宿題は半分以上残っている。万事休すだ。明日、先生から思いっきり怒られるだろうなあ。
- FXで25倍のレバレッジをかけてスイスフランンを購入したら、大暴落してしまい、万事休すの状態に陥ってしまった。もう自己破産するしかない。
- 万事休す!二股交際をしていたことが彼女にバレてしまった。
- 詐欺に遭って、老後の資金が全部なくなってしまった。これからどう生きていけば良いのか分からない。万事休すだ。
- 元々、赤字が続いていた会社で、不祥事が起こってしまい、万事休すの状態になってしまった。
「万事休す」の類義語
万事休すには、以下のような類語があります。
- 刀折れ矢尽きる
- 事ここに至る
- 万策尽きる
- 絶体絶命
- 孤立無援
- 背水の陣
- 八方塞り
- 去るも地獄残るも地獄
- 袋の鼠
- 手も足も出ない
追い込まれ方の度合いは、言葉によって若干違いがあります。
ただ、いずれの言葉も大ピンチの状況であることに間違いありません。
「万事休す」と「絶体絶命」の使い分け方
この中で、特に「万事休す」と「絶体絶命」はどう使い分けるのか気になる方は多いかと思います。
これは、野球の例を挙げると分かりやすいかと思います。
例えば、9回表の攻撃で、3対4で負けていて、2アウトランナーなしという状況は、絶対絶命のピンチです。
これは、実際に高校野球北大阪大会の準決勝で優勝候補の大阪桐蔭高校がライバルの履正社高校相手に負けていた時の状況です。
しかし、ここから大阪桐蔭のバッターは4連続フォアボールを選び、逆転に成功しました。
ただ、同じ状況で、最後のバッターが、平凡なフライを打ち上げてしまった場合は、万事休すです。
あとは、野手がエラーをしない限り、ゲームセットになってしまうからです。
このように、絶対絶命よりも万事休すの方が、ヤバいことがお分かり頂けるかと思います。
「万事休す」の逆の意味の言葉
では、反対に「万事休す」の逆の意味の言葉が何になるか、気に方もいらっしゃるかと思いますが、これはどういった意味で逆であるかによって決まって来ます。
もし、「万事休す」の状態から、一発逆転をするのであれば、「起死回生」、「どんでん返し」、「一発逆転」という言葉が逆の意味になるでしょう。
その一方で、そもそも、ピンチ自体にならないというのであれば、「万事順調」、「順風満帆」、「万事オーケー」という言葉が逆の意味になるかと思います。
「万事休す」はすべての終わりではない
長い人生を生きていると、何度か「万事休す」という時ってありますよね。
借金がむちゃくちゃ膨らんでしまった時
仕事で大失敗をしてしまった時
妻と大喧嘩して離婚の危機に陥った時
などなど・・・
でも、今でもこうやって生きている自分を見てみると、人生って諦めなければ何とかなるのかなって思ったりしています。
実際、「万事休す」は、必ずしもすべての終わりではないことの方が多いです。
私自身、「死ぬこと以外かすり傷」という言葉が好きなのですが、人生のピンチに陥っても、「最悪、死ぬことさえなければ大丈夫だ」というぐらいの大らかな気持ちで乗り越えていくことが大切なのかって思います。
余談・・・
先日、息子から、ちょっと面白い勘違いの話を聞きました。
息子が小さい時に、ドラゴンボールという漫画で、ピッコロが、ラディッツに発した魔貫光殺砲(マカンコウサッポウ)を見事にかわされた時、「ば・・・万事休す か・・・!」と言ったシーンを見て、「万事休すという技があるんだあ~」とつい最近まで思い込んでいたそうなんです。
まさか、今でもそんな技があると思っている人はいないと思いますが、ドラゴンボール世代の方なら、結構、あるあるの話のようですね。